ユーゴスラビアのミロシェビッチ前大統領がなぜ国外に亡命しなかったのかをめぐり、ロシアの受け入れ拒否、亡命資金不足など諸説紛々だが、ベオグラードの消息筋は麻薬中毒にかかっている長女のマリヤさん(三四)の症状悪化が最大の理由との見方を示した。 マリヤさんはテレビ局の経営を任されていたが、長年の麻薬服用で勤務中にもしばしば、言動がおかしくなるなど、ミロシェビッチ一族の頭痛の種だった。同消息筋によれば、「民衆革命」で父親の失脚が確実となった十月初めから、マリヤさんの症状が一段と悪化、病院に収容された。一時は神経性ショックで危篤状態となり、家族は医師から万一の場合の準備をするよう告げられた。その後症状は好転したが、依然入院したままだという。 父親のミロシェビッチ氏は早くから、家族全員での外国亡命を計画していたが、長女を残して国外に出ることはできないとして、泣く泣く国内残留を決意したようだ。独特の政治手法で欧米諸国を翻弄し、「バルカンの狡猾なキツネ」の異名をとったミロシェビッチ氏にも、最愛の娘の麻薬中毒という意外な泣き所があったわけだ。

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