大聖年(二〇〇〇年)の終了を迎えて、ローマ法王ヨハネ・パウロ二世の退位問題が水面下で現実味を帯び始めている。法王は、八十歳の高齢に加えて、体力の衰えが著しい。最近では、説教の言葉も不明瞭で、独自歩行も困難な状態と伝えられている。このほど行なわれた英国のエリザベス女王との会見の際にも、健康の悪化は深刻だったという。さらに、「ベルギーのダンネールス枢機卿の自発的退位を促す発言が、沈静化していた法王退位問題に再び火をつけようとしている」と外交筋は解説する。この外交筋によると、同枢機卿は、司教の七十五歳定年制を持ち出して、法王の「定年引退」の持論を展開、大聖年が終わった来年の引退を強く示唆したという。 同枢機卿はローマカトリック教会の有力者。一方、法王庁も、同枢機卿の個人的見解としただけで、これまで発言の内容には直接コメントしておらず、こうした状況が、関係者の間に波紋を広げている。法王は終身制だが、自ら判断すれば退位は可能。しかし、生存中の退位はわずか四人で、過去七百年間はすべて死去による退位だった。外交筋は、「現法王の意思とは別に、退位問題が再燃するのは必至」と分析している。

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