台湾の陳水扁総統が建設中の第四原発中止を打ち出したことが、原子炉を実質的に受注している日立製作所、東芝の原発ビジネスに深刻な影響を与える懸念が出てきた。工事は三三%程度の進捗状況で、ここで中止しても補償金が入るが、同原子炉の受注と工事を見込んで両社は原発部門の人員を維持しており、「中止されれば補償金ではすまない打撃」(関係者)だという。建設中の軽水炉は改良タイプの沸騰水型(ABWR)で、日本では東京電力の柏崎刈羽原発に二基建設しただけ。台湾の第四原発で開発費の一部を回収したうえで、技術者を電源開発の大間原発など次のABWR建設に回す予定だったからだ。ここで数年のブランクがあけば、「技術の改良どころか継承にすら不安が出る」との指摘がある。 もっとも、日本の業界がそれ以上に不安視するのは、仮に建設工事が再開されるにせよ、台湾側が「国内の批判をかわすため、契約の見直しで新たな値引き要求に出てくる」可能性があることだ。建設中止の底流には二基で六千八百億円という価格問題もあり、日立、東芝の原発部門にとっては今年一月の燃料事業統合をさらに進める全面的な統合も視野に入れざるを得なくなってきた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。