世界最強のネットバンクを目指し、着々と布石を打つ男がスウェーデンにいる。北欧最大の金融機関グループ、ノルディック・バルティック・ホールディング(NBH)頭取で、最高経営責任者(CEO)でもあるハンス・ダルボリ氏(五九)だ。 NBHは時価総額二百四十億ユーロの北欧最大の金融機関。ダルボリ氏はコンピューターや携帯電話を活用した銀行取引であるネットバンキングをNBHの収益の柱と位置づけ、この分野を急拡大している。十月下旬にノルウェー第二位の銀行で同様にネットバンキングを進めていたクリスチャニナ銀行の買収を決め、NBHのネット顧客口座数は百八十万と世界でも最大規模になった。 ダルボリ氏のネットバンキング志向のルーツをたどれば、学者時代に培った「低人口密度経済」とでもいうべき独自の北欧経済学にたどり着く。ダルボリ氏は七二年まで、ストックホルム・スクール・オブ・エコノミーで経済学の教鞭を執っていた。「国土が広く、人口密度が小さい国が豊かになるためには、経済の効率性が極めて重要」というのが同氏の持論だ。低いコストによる質の高い住民サービスが効率のいい経済の背景にある。 人口密度の低い国に支店網を張り巡らすのは効率が悪い。まして、冬の気温が氷点下二十度になるほど厳しい気候。自宅やオフィスに居ながらにして、銀行の用事が足せるネットバンキングは、北欧経済にとって必要不可欠なものだった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。