本稿が読者の手許に届くときにはすでにアメリカの新しい大統領が決まっているだろう。アメリカが新体制のもとでいかなる世界政策を実行するか。これは大問題である。いっぽう、日本ではあまり注目されていないが、ヨーロッパもまた、新たな変革・調整の時期を迎えている。今回は、米欧関係とヨーロッパの今後について焦点をあててみたい。 まず米欧関係についていうと、大統領選の終盤に、ブッシュ候補がバルカンからのアメリカ軍の撤退の可能性に言及したことが、将来の北大西洋条約機構(NATO)のあり方についての議論を誘発した。アメリカのヨーロッパ関与について「構造的不安定」ともいうべきものが生まれてくるのではないかというのである。 十月にユーゴスラビアでミロシェビッチ大統領が退陣し、コシュトニツァ政権が誕生したことで、バルカンにようやく安定化の兆しがみえてきた。しかし、これは、NATOの今後ということでいえば、不安定要因になりかねない。冷戦終結直後にもNATOの将来についての議論が盛んになされたが、再び、NATOをめぐる議論が盛んになるかもしれない。 コラムニストのウィリアム・パフによれば、NATO同盟は、加盟国それぞれにとって異なる意味がある。

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