「独立前夜」東ティモールの憂鬱

執筆者:大塚智彦2000年11月号

オーストラリア、インドネシア、国連の思惑に振り回され…… 昨年八月、インドネシアからの独立を問う住民投票の結果、圧倒的多数で独立を勝ち取った東ティモールは、今国連東ティモール暫定統治機構(UNTAET)による暫定統治下にある。早ければ来年末にも実現される独立に向け、UNTAET、各国NGO、国際赤十字、平和維持軍などの協力で、インフラ整備や人材育成が着々と進んでいる。 しかし、投票前に東ティモール人の多くが夢見た「独立国家・東ティモール」の青写真が、ここに来て少しずつ、“微妙だが、確実に”ずれ始めている。インドネシアという後ろ盾を自らの意思で捨てた今、それに代わる受け皿として国際社会の支援に全面的に頼らざるを得ないという側面は現状では否めないものの、「なにか違うぞ」という漠然とした思いが、多くの東ティモール人の胸に去来しているのだ。一体何が起きているのか。 住民投票から一年を迎えた今年八月三十日、東ティモールの中心都市ディリは、一周年を祝う記念式典に参加するために集まった数万人の市民であふれた。インドネシア併合時代の昨年八月まで紅白のインドネシア国旗が翻り、実弾を装填したインドネシア国軍の兵士、警察官が警備していた州政府庁舎には、青い国連旗が掲揚され、中央の演壇にはオーストラリア外相、米上院議員、中国人実業家などの来賓と、シャナナ・グスマン氏、ラモス・ホルタ氏ら独立運動関係者が並んだ。

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