「最初の危機はしのげても、二度目の危機は予兆を軽視した咎も加わり衝撃は倍加する。第一弾の公的資金投入で小康を取り戻したかにみえた日本の金融システムは、一九九八年春、日本長期信用銀行の経営不安をきっかけに再び崩壊の淵に立った」(日本経済新聞社編『検証バブル 犯意なき過ち』日本経済新聞社刊 一六〇〇円) 国際政治学者の故高坂正堯氏は、本誌に連載した「世界史の中から考える」の中で「バブルで亡んだ国はない」と述べている。バブルは三流の国が一流に手が届こうとするときにおこるものであり、肝要なのはその後の対処をしっかり行なうことだというのが、高坂氏の主張だ。その際に絶対にしてはならないのは「後ろ向きの対処」だという。高坂氏がそう述べたのは一九九三年だが、それから七年以上が過ぎた今日、依然として日本はバブル崩壊後の長期的な不況から抜け出せないでいる。しかも、痛みを伴う構造改革のほとんどは先送りされたままだ。 本書は、八五年の「プラザ合意」に端を発するバブルの勃興と崩壊、その処理の誤りというプロセスを、政官財のキーマンたちの証言に基づいて構成・検証した迫真のドキュメンタリーである。特にバブル崩壊後の描写は興味深い。問題が浮上する度、適切と思われる選択をしたはずだったが、日本経済の凋落は止まらない。政策担当者、経営者たちの焦燥感と楽観が入り交じった複雑な心境が手に取るように伝わってくる。後年「日本のバブル」が世界史の中で再検証されるとき、重要な参考文献となる一冊だろう。

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