窮地に陥った日本のロケット開発

執筆者:正木利2000年11月号

新型H2Aロケット打ち上げは絶対に失敗を許されない状況―― 日本のロケット開発が重大な転換期を迎えている。発端となったのは昨年十一月、国産ロケット、H2・8号機の打ち上げに失敗したことだ。8号機打ち上げがすんなりと成功すれば、国は後継機のH2Aロケットで二〇〇〇年中にも国際打ち上げビジネスの場に進出する予定だったが、この失敗でスケジュールの見直しを余儀なくされた。しかも、その後も開発中のトラブルが続き、政府内からも開発体制の無駄が指摘されている。一九六四年以来、国策として取り組まれてきた実用化ロケットの開発だが、積年のひずみを解消すべき時期に来ているようだ。 今年十月、H2・8号機の打ち上げ失敗をめぐり、前代未聞の騒ぎが明らかになった。衛星打ち上げを委託した運輸省を相手取り、ロケットを開発した宇宙開発事業団が、打ち上げ費用百四十億円のうちの未払い分三十五億円の支払いを求める民事調停を東京地裁に申し立てたのだ。 H2・8号機に搭載された運輸多目的衛星「MTSAT」は、運輸省と気象庁が米国の衛星メーカー、ロラール社に発注し、約百億円をかけて製作したものだ。もともと日本のロケット打ち上げは成否を問わずに、国が全額を負担してきたが、MTSATは従来のケースとは異なり、二省庁と事業団の間で初めて個別の打ち上げ契約が結ばれており、この解釈をめぐる相違点が調停の焦点となりそうだ。

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