野中広務自民党幹事長辞任のニュースは、霞が関にも衝撃を与えた。だが、外務省幹部は「これで日朝交渉は進展するかもしれない」と、逆に“歓迎”している。というのも、先の北京での日朝国交正常化交渉は事実上決裂し、次回交渉の日程も決まらないまま暗礁に乗り上げていたが、無役になった野中氏が首相特使として年明け早々に訪朝し、金正日総書記とのトップ会談で膠着状態を打開する可能性が出てきたからだ。 日朝交渉後、北朝鮮側は日本側が提案した経済協力方式への批判を強めるなど、この問題での非妥協路線を明確にしている。しかし、クリスマス前のクリントン訪朝説も急浮上する中、外交による政権の求心力回復を狙う森喜朗首相は、日朝交渉を進展させたい意向だという。「首相外交最高顧問」の肩書きを持つ中曾根康弘元首相はそうした首相の“助平心”を見抜き、密かに官邸サイドにアプローチし、自らを首相特使として平壌に派遣するよう働きかけているという。これに対し、外務省サイドは、「中曾根特使」の“独走”を危惧しており、金正日総書記の腹心である金容淳書記の信頼厚い野中氏に訪朝してもらいたいというのが本音である。

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