見切り発車した「BSデジタル放送」

執筆者:馬場友美2000年12月号

「視聴者軽視」が起こした大混乱 テレビの本格的なデジタル化の幕開けを告げるBS(放送衛星)デジタル放送の本放送が、十二月一日午前十一時にスタートした。売り物は、高画質の画面に加え、テレビを見ながら視聴者がリモコンで買い物をしたり、クイズ番組に参加できる「双方向性」だ。テレビはNHK(三チャンネル)のほか、在京民放キー局系の五局、WOWOW、スター・チャンネルBSの計八局が十チャンネルを放送。データ専門放送も七局、音声放送(BSラジオ)も二十三チャンネルが放送されるなど、テレビは一気に多チャンネル時代に突入した。各局は「地上波放送開始以来の大変革」と自賛。NHKに至っては、放送開始に合わせて一般のアナログ地上波放送でも特別番組を編成し、終日BSデジタル一色のお祭り騒ぎを展開した。 だが、放送各局や電機メーカーなどがテレビCMや新聞・雑誌の広告などを通じて「新テレビ時代の到来」を繰り返しアピールし、消費者の物欲をかき立てたというのに、実際にお茶の間で放送開始の“歴史的瞬間”を見ることができた世帯は、ごく少数にとどまった。対応型テレビやチューナー(受信機)が生産の遅れで品薄状態が続き、放送開始時の普及台数はたったの二十万台前後(推定)に過ぎなかったためだ。

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