「『週間子供ニュース』で『ベルリンの壁崩壊』を取り上げたときのことです。『ベルリンの壁が壊されてしまいました』という表現を使ったところ、出演者のこどもたちが、『誰がどうやって壊したの?』と問いかけました」(池上彰『そうだったのか! 現代史』集英社刊 一七〇〇円) 子供にものを説明するのは難しい。自分が真に理解していなければ、子供にもわかる平易な言葉で解説することはできないからだ。「週刊こどもニュース」の池上家の物知りお父さん(実はNHK報道局記者主幹)池上彰氏は、「株式会社って何?」「南北朝鮮はどうして分かれているの?」「住専問題って何?」といった一筋縄ではいかない疑問・質問に、これ以上ないほど簡潔明瞭な答えを示してくれる。しかも、その説明は短絡的になることなく、知っているつもりの大人でも、「ふーん、そうだったのか」と膝を打つことが少なくない。 日本語に関する著書も多い池上氏は、日頃から、あらゆる事象について「つまるところ、どういうことなのか」と、本質を捉える努力を重ねている人なのだ。その日々の研鑽が、現代史の格好の教科書である本書を生んだ。 一九八九年十一月九日、ベルリンの壁が「崩壊」した時、たしかに私たちは歴史が動く瞬間を目の当たりにした。だが、冷戦という歴史を踏まえていない子供に「壁崩壊」が、単に物理的な「破壊」としか聞こえなかったように、そもそも冷戦がいかに始まったのかが理解できていなければ、冷戦終焉の意味も本当に理解できているとは言い難いだろう。

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