米国が怯える「金融システム不安」

執筆者:川原吉史2000年12月号

インターネットバブルの崩壊で不良債権が増加、信用収縮の危機が高まっている[ニューヨーク発]混迷する米大統領選の舞台となったフロリダ州。世界中の注目を集める同州が、米政治のみならず米経済不安の震源地ともなっている。同州の高級リゾート、ボカラトンに本社を構える電気製品メーカーのサンビームの経営危機が、米金融界を大きく揺さぶっているからだ。 コーヒーメーカーなどを主力とする同社は「チェーンソー(電動ノコギリ)」の異名をとったアルバート・ダンラップ前会長の下で進めた買収戦略に失敗、総資産の八割にあたる約二十四億ドル(九月末)の有利子負債を抱え込んだ。巨額の利払い負担で過去二年間にわたって赤字を垂れ流しており、いまだに再建のメドは立っていない。「消費財メーカーへの融資が焦げ付く恐れがある」。十一月十六日、米銀大手のバンク・オブ・アメリカ(以下バンカメ)は十―十二月期の貸倒引当金が七―九月期の約二倍の八億ドル規模に膨らむとの見通しを明らかにした。地銀大手のファースト・ユニオンも同日、「融資先企業の経営悪化で十―十二月期の不良債権が四億五千万ドル増える」と発表。両行の不良債権急増の主因がサンビームであることは、金融関係者であれば誰もがすぐにわかった。

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