NO 90%「訴訟社会ニッポン」という夢(地獄?)物語の実現には、いくつかの条件がある。条件(1) まず訴訟人がどっと増えることだ。訴訟人というのはいうまでもなく裁判でなりわいを立てる弁護士を意味する。現在、日本の弁護士数は全国約一万七千人。弁護士が医師のように増えて身近な存在になれば「権利の病気」にかかった人、つまり交通事故の被害者や紛争に巻き込まれた人は気軽に法律事務所に足を向けることになる。医師一人当たりの患者の人口をみてみると日本の五百二十人に対し米国は約三百四十人。仮にこの比率と同じぐらいまでに弁護士を増やそうと思えば、日本では二十万人強の弁護士が必要になる。条件(2) 訴訟で弁護士が稼げること。稼げない市場には誰も参入しない。日本弁護士連合会が二〇〇〇年春に調査した統計(約五千七百人が回答)によると、弁護士の平均収入は約三千二百万円。弁護士が大幅増員されれば開業する弁護士も増えることになるが、法的サービス市場全体が広がらなければ、弁護士の平均収入が下がったり、官僚や企業の社員弁護士が増えるだけだ。 弁護士の実入りを増やすには、巨額訴訟の増加と懲罰賠償制度の導入が一番だろう。まだ一審段階だが、大和銀行株主代表訴訟では約八百億円近い損害賠償が大阪地裁で認められており、こうした民事訴訟制度が維持、拡充されれば訴訟人は潤う。

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