「新成功体験」に学べ

執筆者:伊藤幸人2001年1月号

 年末年始の株安、円安が象徴するように、残念ながら、日本の新世紀の幕開けは、激しい暴風雨の到来を予感させる暗雲が立ち込めたものとなってしまった。特に株価については、98年10月に記録したバブル崩壊以降の最安値(1万2879円)を更新する危険性さえ現実味を帯びている。21世紀の初頭に立った日本は、きわめて厳しい現実に直面しているのだ。 この先、日本はどのように再生を図っていくべきなのだろうか。その処方箋については、これまでも数え切れないほど多くの議論がなされてきた。バブルが崩壊した90年代前半には、「成功体験からの脱却」の必要が盛んに主張された。右肩上がり経済の成功体験に固執し、その時代と同じ手法を繰り返そうとするからダメなのだ、と。さらに90年代後半に入って金融危機が深刻化し、いよいよ恐慌の可能性までが懸念されるようになると、「失敗の研究」の重要性が盛んに論じられた。アメリカ経済が90年代に復活できたのは、80年代の経済運営の失敗を率直に反省し、それをバネに官民共に改革を推し進めたからで、日本もそれに倣うべきだとされた。実際日本でも、バブル経済の発生と崩壊という「失敗の歴史」に対する検証がさまざまな形で行なわれた。

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