八九年六月に起きた天安門事件後の中国指導部内の議論を暴露する重要資料として米フォーリン・アフェアーズ誌が掲載した「天安門文書」は、真偽や同文書の入手経路をめぐって謎の部分が少なくないが、現上層部の権力闘争が反映されているとの分析が出ている。 同文書が描写する当時の指導部で現在も権力のある地位にとどまっているのは李鵬・全人代常務委員長(事件当時は首相)だけで、「江沢民主席はじめ他の幹部には暴露は実はさほど大きな打撃ではない」(中国ウォッチャー)からだ。李鵬委員長は二〇〇三年春に退任する見通しだが、本人は留任または他の権力のある地位にとどまる意欲が強く、指導部内の波乱要因になっている。 昨年秋の中国共産党の五中全会で江主席の側近中の側近、曾慶紅党組織部長の政治局員昇格が見送られたのも「李鵬氏の反対が最大の原因」とされ、江主席は李委員長に明確に引導を渡し、曾氏の引き上げもスムーズに進めたい考え。天安門文書には江氏がトウ小平氏らに強く支持され国家主席に就任する場面がはっきりと描かれており、江沢民体制の正当性を改めて確認する内容であることにも注目する必要がある。

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