小倉昌男。今さら多くの説明を必要としないであろう。ヤマト運輸元会長で、「宅急便」の生みの親として知られ、運輸省などとの“闘争”を経て規制緩和の流れを作り出した人物である。 九五年に経営の一線から身を退き、現在は財団法人ヤマト福祉財団の理事長という職にある。功成り名を遂げて社会への恩返しの毎日といった身分であるが、この新年に経済誌が特集した「日本の社長が選ぶ二一世紀型経営者」のランキングでは、あまたの現役経営者を抑えて一二位にランキングされた。今なお経営者としての評価が高いのみならず、さらなる期待を持たれてもいる。 九九年一〇月に刊行された自著『小倉昌男 経営学』は実売で一二万部に達するロングセラー。なぜこれほど売れたのか。本人の分析は、「連結決算ベースで一〇期連続の最高益更新となるなど市場原理を貫徹した企業の秘密を知りたがっているのじゃないだろうか。規制を撤廃すべきではないかという経営者の問題意識もあると思う」と明解だ。だが、「僕はあまり経営者に期待していないんだ。市場原理といえば格好は良いが実際は非常に厳しい。誰もが総論賛成、各論反対。本音と建て前の間で揺れている」と相変わらず手厳しい。

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