ネットバブル崩壊後のVCとVBの行方

執筆者:梅田望夫2001年1月号

 新世紀は米国株式市場の急落から始まった。一月二日、ナスダック総合指数は二三〇〇ポイントを割り込み、一年十カ月ぶりの安値となった。 ここのところ、「ネットバブル崩壊後のシリコンバレー、つまりはベンチャーキャピタル(以下VC)とベンチャービジネス(以下VB)の世界では、現実に何が起きているのか」という質問をよく受ける。そこで本稿ではできるだけ具体的に、新世紀を迎えたシリコンバレーを展望してみたいと思う。 まずVC資金は全く枯渇していない。むしろ歴史的にみてもこれ以上ないほどの額の資金が、良質の投資対象と適切な投資タイミングを待っている状態にある。九九年から二〇〇〇年にかけて、VCは一挙に肥大化した。数千万ドルからせいぜい一億ドルくらいが常識だったファンド・サイズが一桁大きくなり、数億ドルは当たり前、十億ドル以上のメガファンドすら二十二個も生まれた。この時期に調達された莫大なVC資金のかなりの部分が、いまだ手つかずのまま残っている。 ただ、新しいVBへの投資は一時ぐっと絞られた。ネットバブル崩壊以降、株式公開という出口がほぼ閉ざされ、情報技術企業大手の株価も下落しているため大企業への売却という出口もぐっと狭くなった。そこで、二〇〇〇年後半には、公開寸前でまもなく資金が枯渇するVB群の資金需要を満たすために、VCが予想外の追加投資を余儀なくされることになった。つまり、VCにとっての最優先事項が「新しいVBの発掘」ではなく「既に投資したVBを何とかすること」に変わったため、新しいVBがVCの関心を集めるのが実に難しくなってしまったのだ。

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