アメリカ政治史上、副大統領がこれほどの注目を集めたことはない。英『エコノミスト』誌はディック・チェイニーを「初のアメリカ首相」と書き、『ワシントン・ポスト』紙は、「株式会社ブッシュ・チェイニー」のCEOはチェイニーだと書いた。 たしかに、国家安全保障に関わる重大決定にしても、一癖も二癖もあるベテラン揃いとなるブッシュ政権の調停役としても、チェイニーがブッシュ大統領と並んで、最重要人物となることは疑う余地がない。 五十九歳のチェイニーは、副大統領となるに十分すぎるほどの経験を積んできた。一九七五年から七七年にはフォード大統領の首席補佐官、七八年から八九年は下院議員、八九年から九三年は先代のブッシュ大統領のもとで国防長官と、その経歴は華々しい。九五年以降は、ダラスの世界屈指の石油業界相手のエンジニアリング・建設会社ハリバートンのCEOだった。 議員としての過去の投票を見ると、チェイニーは中絶に反対する一方で、銃の所有に賛成。最も保守派の部類に属する。だが、こうした問題はチェイニーの関心事ではない。熱心に取り組んできたのは、安全保障問題だ。当然、アメリカの世界への関与の仕方についても、チェイニーの発言力は大きなものになるだろう。パウエル国務長官とは個人的にも極めて親しい間柄だし、ラムズフェルド国防長官を選んだのもチェイニーだ。

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