二〇〇一年一月一日午前十一時半、森喜朗首相は年始客で埋まる官邸中庭で新年の挨拶に立った。「今年は単なる新年ではなく、新しい世紀の始まりに遭遇できた。皆さんとともに、二十一世紀の扉を開けることができたことを心からお喜び申し上げたい。今年もある時は厳しく、ある時は優しく、ご指導ご鞭撻いただくようお願い申し上げる」 首相が一礼すると、演台を取り囲んだ一団から一際大きな拍手が沸き起こった。拍手の主は、未明に石川県を出発しチャーターバスを連ねて上京してきた首相の地元後援会メンバー。逆風の真っ直中にいる「おらが首相」を元気付けようと夜を徹して駆けつけた一団だった。「サクラ」と分かっていても嬉しいものなのだろう。首相は相好を崩し、リラックスした口調で続けた。「実は昨日から東京は天気が悪く、私は夕べから一睡もしないで、それこそ神に祈る気持ちだった。もし天候が悪いと、また何を言われるか分からないですから」。歯を見せて笑う人、真顔で頷く人。「それがどうでしょう、この青空。東京でもこんな素晴らしい青空は滅多にない。まさに日本晴れ、私の心も日本晴れだ。この一年、日本も世界も日本晴れ、世界晴れが続くよう祈っている」。首相は得意満面、この元旦の天気こそ森政権の前途を祝福する吉兆だと言わんばかりに「日本晴れ」を連発した。

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