米国との直接的対立は望まない中国

執筆者:伊藤正2001年2月号

北朝鮮・金正日総書記の二度目の訪中に隠されたキーワードは「米国」だった。ブッシュ新政権が対中関係見直しを図る中、江沢民主権はいかなる米中関係を構築しようとしているのか。[北京発]北京はこの冬、雪の日が多かった。二月上旬までに八回も降り、平常湿度二〇%ほどに乾燥しきる北京には珍しい冬だ。春節(旧暦の正月、今年の元日は一月二十四日)前後の雪は「瑞雪」といい、害虫を殺し豊作をもたらすと信じられている。その春節を前にした一月十五日、北朝鮮の金正日労働党総書記の専用列車がひそかに中国入りし、北京を通過、上海に向かった。一切公式確認がとれないまま、数日間、間接情報に振り回され続けた。 中国共産党中央対外連絡部が金正日氏の訪中を公表したのは、一月二十日午後六時半すぎ(北京時間)だった。その時点で、金氏は既に中国を離れた、と北京駐在のほとんどの記者や外交官は思い込んだ。昨年五月に訪中した際は、平壌帰着の翌日に公表されており、今回も同じだとみられていたからだ。 実際には一行の専用列車が北京を出発したのは、中国側発表の二時間後だった。その日午後、上海視察を終え北京に着いた金正日氏は、人民大会堂で江沢民国家主席(党総書記)と会談、引き続き会食していたのである。専用列車が中朝国境を越えたのは翌二十一日午前十一時前だった。

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