毎年一月末にスイスの観光地ダボスで開催される世界経済フォーラムの年次大会には、今年は、森喜朗首相が日本の現職の首相として初めて参加した。昨年のクリントン米前大統領やブレア英首相ほどの大聴衆を集めたわけではないが、日本の最高責任者が、日本経済を立ち直らせるとの決意を明らかにし、また、IT戦略や日本のアフリカなど発展途上世界への継続的な関与を説明したことは意味があっただろう。世界経済フォーラムは、ここ何年も、国際論壇の趨勢にある種の方向を与えることが多くなっており、そこに日本の有力政治家が登場しなければ、日本での議論と関係なしに、世界の日本に対する見方が決定されてしまう。少なくとも、日本の首相がそこに居合わせて、それなりの発言をすることは大事である。 その意味でいえば、今回のダボスで行なわれた、鳩山由紀夫民主党代表、小林陽太郎経済同友会代表幹事、堺屋太一前経済企画庁長官、日本に詳しいゴールドマン・サックス(アジア)副会長のケネス・カーティスの四人が行なった日本経済の将来についてのセッションのような議論が、もっともっと行なわれなければならない。 残念なことに、鳩山代表は、用意してきた原稿にこだわりすぎたためか、やや発言に迫力を欠くことになり、堺屋前長官が行なった自らの政策擁護の論陣に対して、十分知的な議論を行なって対峙することができなかった。これに加え、日本から経済学者やエコノミストが数多く参加し、楽観論にしても悲観論にしても、もう少し経済学的に洗練された日本経済動向論を行なうべきではなかったかと感じた。

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