先頭を走るLVMHが仕掛けた「大型店展開」と「ネット小売り」「クリスチャン・ディオール」「ルイ・ヴィトン」などを傘下に持つフランスの高級ブランド企業、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのベルナール・アルノー会長の野望はとどまるところを知らない。人前に出るのを嫌い、ピアノを愛する一見華奢なこの経営者の実像は、見かけとは正反対の「ハンター」である。二十年をかけてファッション、皮革や香水からコニャック、ワインに至るまで三十以上の高級ブランドを手に入れたというのに、今年に入って新たにダイヤモンドをブランドのコレクションの一つに加えた。 一月十六日、ロンドンのシティー(金融街)。「ダイヤモンドは永遠に」の広告で知られるダイヤモンド鉱山会社のデ・ビアス本社で、アルノー会長はデ・ビアスのニッキー・オッペンハイマー会長と並んで、ダイヤモンド宝飾ブランドを世界展開する計画を高らかに打ち上げた。 世界のダイヤモンド原石の六割を握るデ・ビアスと、世界の主だったブランドを持つLVMHの強者同士がそれぞれ二億ドル(約二百二十億円)を出資して新会社をつくり、一年半以内にパリはヴァンドーム広場ニューヨークは五番街そして東京は銀座に「デ・ビアス」ブランドのダイヤモンドを前面に出した宝飾店をオープンする。「女性ならオードリー・ヘップバーンのイメージ。(これまで冷たい印象があった)デ・ビアスのブランドに熱を加えて、熱いイメージにしたい」。クールなアルノー会長がこの日の記者会見ではいつになく興奮していた。

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