小泉純一郎元厚相と並んでポスト森の候補とされた河野洋平外相は、外務省元幹部による機密費流用事件で首相レースから後退した。公明党の神崎武法代表は河野氏について「一番目だったが難しくなった。非運の人だよ」と漏らしている。 機密費流用事件の波紋は大きい。もし外務省の組織的な関与が判明すれば、河野氏は辞任せざるを得ない。そして、もし言われるように外務省機密費が官房機密費に上納されていたとなれば、財政法違反で司直の手が首相官邸に及ぶ前代未聞の事態となる可能性もある。とはいえ、機密費の性格上すべてが明らかになることはあり得ず、結局あるのは政治決着のみだろう。 それゆえに河野氏は「個人の犯罪」を強調し、福田康夫官房長官は「外務省の責任」を繰り返しているわけだが、すでに永田町では、落とし所は川島裕外務事務次官の引責辞任との見方が浮上している。もはや川島氏の「辞任は時間の問題」(自民党幹部)と言われるが、ここでも外相の監督責任が問われる。側近によれば、河野氏は「(ポスト森は)諦めの境地。それだけに役所の弁護だけして辞めるわけにはいかない」と腹を括っているという。 いまのところ河野氏を擁護しているのは森喜朗首相だけ。自民党の野党時代、河野総裁、森幹事長でコンビを組んで以来の仲だからだが、裏を返せば自民党の一部に「首相の首を取るには河野辞任カードを有効に使う手もある」との声があり、自己保身を図る森首相が河野氏との関係維持に懸命なだけだ。

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