第百五十一通常国会が召集された一月三十一日午後、新世紀初の国会の幕開けを飾る森喜朗首相の施政方針演説が衆参両院本会議で行われた。 昨年四月、自由党の連立政権離脱という政局激動の最中に脳梗塞で倒れた故小渕恵三前首相の後を継ぎ、急場凌ぎのリリーフ投手としてマウンドに送り出されてから十カ月。相次ぐ失言で「首相の資質」を問われ、政策面でも「丸投げ」とリーダーシップの欠如を批判され、まさにボロボロになりながら辿り着いた「二十一世紀最初の日本国首相」の座。しかし、首相がそうした感慨に浸れたのは冒頭の三十秒間だけだった。「このような重要な国会の冒頭に、財団法人ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団(KSD)をめぐり議員が逮捕されたことから申し上げなければならないのは誠に残念の極みであります。また本件に関連して閣僚が辞任いたしました。政治倫理の確立については政治家一人ひとりが厳しく身を律していくことが何より重要です」 演説がKSD事件に移ると、野党席から堰を切ったようにヤジが飛び交った。「謝れ」「反省しろ」「声が小さい」。逮捕されたのは自民党の小山孝雄参院議員(一月二十九日議員辞職)、閣僚を辞任したのは自民党の額賀福志郎経済財政担当相(同二十三日辞任、後任に麻生太郎氏)である。自民党総裁として「おわび」の言葉があってしかるべきところを、「残念の極み」「政治家一人ひとりが」とは何事か。そんな怒りがヤジに込められていた。

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