米原潜グリーンビルと実習船えひめ丸が衝突した事故をめぐる責任追及の行方は、ある知日家の判断に委ねられている。その人物は太平洋艦隊司令官のトーマス・ファーゴ大将。 ワドル前艦長ら原潜の幹部三人の処分方針を決める査問会議は、最終的に軍法会議にかけるか否かをファーゴ司令官に勧告する。勧告を受け入れるか、より軽い行政処分ですませるかは司令官が決める。 ファーゴ司令官は海軍大佐だった父の転勤で来日し、佐世保市内の高校で学んだ。海軍士官学校を卒業後、海軍に入隊し、一九九二年から九三年には第七十四任務部隊の司令官として横須賀に勤務した。横須賀を再訪した際は、「どぶ板通り」を懐かしむほどの日本贔屓。一方、ワドル前艦長は三沢市生まれ。日本領事館を訪れて謝罪した際、領事館側の説明に「はい」と日本語で答えた。 ファーゴ、ワドルの二人は共に「日本人の心」を知る数少ない米軍人。裁く側と裁かれる側に分かれたのは皮肉な運命ともいえる。海自関係者は「日本の世論をよく知るファーゴ氏だけにワドル前艦長らを軍法会議にかける決断をするのは間違いない」という。一方で、身内が身内を裁く軍法会議が厳しい結論を出す可能性は小さいとの見方もある。

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