「空爆」では揺るがないフセイン体制

執筆者:村上大介2001年3月号

アラブ世界も「対イラク制裁解除」を求める可能性が高い[カイロ発]湾岸戦争による「クウェート解放」から十年にあたる二月二十六日、コリン・パウエル米国務長官は初の中東歴訪の一環としてクウェートに立ち寄り、戦争当時大統領だったジョージ・ブッシュ氏らと「解放十周年」の式典に出席した。前夜、ヨルダンからクウェート入りしたパウエル長官は、湾岸戦争を振り返り、「イラクの脅威を封じ込め続けることが最も重要なのだ。あのような悲劇(イラクによるクウェート占領)は二度と起きない。心配はいらない」と、イラク封じ込め継続への決意を示した。 八年ぶりの共和党政権で国務長官に就任したパウエル氏は湾岸戦争での米統合参謀本部議長。しかもブッシュ元大統領の長男、ジョージ・W・ブッシュ大統領のもとで湾岸戦争十周年を迎えるとは何やら因縁めくが、就任早々から空洞化の著しい対イラク制裁の引き締めを口にしてきたパウエル長官にとって、十年後に訪れた中東の風向きの変化は、クウェートでの発言とは裏腹に、想像以上に厳しいものだった。 一九九〇年八月、世界有数の産油国が同胞アラブの産油国を軍事力で制圧するという衝撃的なイラクのクウェート侵攻では、当初「アラブ内解決」が模索された。だが、米欧の軍事介入や対イラク武力行使に反対するアラブ世論が強かったものの、結局、米軍に頼る以外に身を守る術のないサウジアラビアを中心に、米国からの経済・軍事援助が不可欠なエジプト、イラクと対立関係にあったシリアなどが米国主導の多国籍軍に派兵、アラブ世界は二分されたまま湾岸戦争に突入した。

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