若者が夢を語らない日本

執筆者:小笠原祐子2001年3月号

 ゼミの三年生がメールを送ってきた。「もう就職活動が始まっています。会社説明会が続いて辛くなってきました」 ああ、またそんな季節がめぐってきたのか、と学生たちの就職活動にしばし思いをはせた。毎年教員として大勢の学生を社会に送り出しているが、今年は学内の就職委員を務めたこともあり、いつも以上に学生の就職を身近に感じた年であった。 就職活動を前にした学生に希望の仕事を尋ねて、明確な職種や就職希望先が答えとして返ってくることは、むしろ少ないようだ。アルバイトはともかく、それ以外に働いた経験がないのだから、無理もないと思う。しかし、明確な職種や就職希望先を言わない学生も、多くがこう言う。「自分に合った仕事」「自分の個性が生かせる仕事」「生き甲斐を感じられる仕事」がしたい、と。私は、学生たちが判で押したようにこう答えるのを初めて聞いたとき、小さな違和感を抱いた。 もちろん、会社や仕事に隷属するのではなく、自分や自分の生活を大切にしたいと願う学生の気持ちには大いに共感できる。そこには、経済優先、効率優先で突き進んできた、これまでの日本社会のあり方に対する批判や反省も感じられ、思わず「がんばれ!」と応援したくなる。

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