えひめ丸事件で露呈した「弱い日本」

執筆者:田中明彦2001年3月号

 ハワイ沖で米原子力潜水艦に衝突され沈没したえひめ丸の事件が日本で大々的に報道されたのは当然であるが、アメリカでも、そして世界的なメディアでもかなり大きく取り上げられた。この事件によって日米関係が危機的な状況になるわけではないが、それにしても、日米関係を重視するとしていたブッシュ政権の出鼻をくじくような事件であった。 そして、それと同様に深刻なのは、えひめ丸の沈没と時を同じくして、日本の政治全体さらには日本経済全体が沈没しそうなことである。もちろん、日本経済の問題は、構造的な問題であり経済的な理由がある。また、日本政治の混乱は、少なくとも森政権の誕生以来ずっと続いてきたことである。しかし、えひめ丸事件に対する森首相の対応の遅れをきっかけにして、森首相の退陣要求に火がついた。そして、政治的展望が開けないことが、株価の急下降をもたらした。この一カ月、ブッシュ政権によるイラクの空爆以外には、世界的に特に目立った大事件がなかったせいもあって、国際論壇の一つの関心は日本にむけられるということになったのである。 アメリカのメディアのえひめ丸事件に対する報道については、すでに多くの日本のメディアで伝えられている。『ニューヨーク・タイムズ』紙社説が述べるように、ブッシュ政権がただちに日本に謝罪したことは適切であり、「現在最も重要なことは、潜水艦事故の調査と犠牲者への償いに全力を尽くすことである」ということに異論はあまりない(“Problems With Japan,”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)』、二月十四日)。

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