株価下落が日本を襲っている。一九八九年末、バブル絶頂期の日経平均の高値からみると「半値八掛け二割引」という相場反転のゾーンにまで下がりながら、下値の見えない現実。 危機が表面化すると大衆社会では必ずスケープゴート(生け贄の山羊)探しがはじまる。スケープゴート探しは、常に危機のある面をついているが、その全てではない。従って、大衆がその欲求を満足させることはできても、問題の本質的な解決にはならない。現在のスケープゴートは、支持率一〇%を割り込んだ森喜朗政権であり、速水優日本銀行総裁である。 しかし、スケープゴートにはならないけれども、森総理や速水総裁よりも、もっと日本のシステム危機の本質を体現している人物がいる。東京証券取引所の土田正顕理事長である。かつて大蔵省(現財務省)銀行局長として“経済失政”を担った人物が、なんの検証もないまま証券市場のリーダーにおさまり、取引所の「株式会社化」に旗をふる姿こそ、変わらない日本システムと底なしの株価下落の象徴である。矛盾を先送りした土田行政 一九九一年から九二年に時計の針を戻してみよう。現在日本が直面している金融システム危機の原点はこの二年間に集約されるからだ。

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