大変な世の中になってしまったんだなぁ、というのが偽らざる心境である。 グローバリゼーション、IT革命、スピードの経済、ウィナー・テイク・オール、自己責任原則、リスク・テイキング、メガ・コンペティション。 こうした新しいルールがニュー・エコノミーの陶酔感とともに実感できた昨年までは、その厳しい本質がオブラートに包まれていたゆえ、私たちは本当の「苦い味」を感じずにすんだ。 しかし今は違う。失速する米国経済が立ち直るかどうかは、「陶酔感なしでこの過酷な新しいルールが適用される初めての試み」の成否にかかっている。「米国の景気はどうですか。経済はいつ頃上向きになりますか?」 日本の人からこんな質問を受けるたび、私はこういう発想が有効だった時代はやっぱり良かったんだなぁと思ってしまう。「経済が上向けば皆が幸せになれる」という共通認識が、質問の背景には存在するからだ。 しかし現実問題として、エクイティ資産の半分以上を家計が持つという米国の経済構造において経済が上向きになるためには、まず、企業が手段の限りを尽くして業績を戻して株価を上げることが不可欠である。 その手段には事業売却や大量のレイオフによる効率向上は織り込まれ、同業者からパイを奪い合う熾烈な競争が繰り広げられることは必至である。経営危機に陥ったルーセントやゼロックスのようにならないための生存競争がありとあらゆる産業で始まっている。ここで勝ち残った企業群が景気回復の第一の牽引役となるはずだが、良くも悪くもIT革命の進行は止まらないから、スピードが激化した中での競争を経た上での話である。

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