自壊する日本プロ野球

執筆者:篠山正幸2001年3月号

さらに加速する「空洞化」と「巨人一人勝ち」 まさに内憂外患、日本のプロ野球の前途は危うしだ。メジャーのオープン戦デビューを初打席初安打で飾ったマリナーズ・イチロー(前オリックス)が日本国内の「空洞化」を象徴するなら、巨人戦テレビ視聴率の伸び悩みは「一極集中」の球界の限界を暗示している。崩壊のきしみが、あちこちから聞こえはじめてきた。「こっちは野球の話をしているのに向こうは法律の話。これではかみ合うわけがない」 ある球団の代表は代理人相手の交渉にほとほと疲れた様子だった。二〇〇〇年のオフから“解禁”された代理人による契約更改交渉は、これまでベールに包まれてきた査定を白日の下にさらけだすはずだった。しかし、どうも選手・球団双方にとって実りある議論はなされなかったようで、結局は日本的な妥協に終わった感じが否めない。 十度の交渉も妥結せず、年俸調停に至った日本ハム・下柳剛投手の例がまさに典型だ。川島廣守コミッショナーを委員長とする調停委員会の結論は、球団提示の一億三千七百五十万円から二百五十万円増えただけの一億四千万円。調停委の実質的な裁定は球団提示通りだ。代理人たる弁護士のメンツを立てるために手数料分だけを上積みした、というのが経営者側の認識である。

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