日本版「地域通貨」の鼓動

執筆者:足立紀尚2001年3月号

地方自治体再生の“道具”として広まろうとしている「お年寄りが、あんなに嬉しそうな顔をしているのを見たのは初めてのことでした」――。 北海道栗山町に住む二十代のある女性は、エコマネー「クリン」の運動に参加した経験をこう振り返った。 栗山町で「クリン」の第一次実験がスタートしたのは昨年二月。参加者は、申込みと同時に自分が「できること」と「してほしいこと」を登録する。この女性は、してほしいことに「家電の修理」、できることには「マッサージ」と書いた。すると、マッサージの希望者がさっそく現れた。「相手は、ひとり暮らしのおばあさんだったのですが、週に一回ほど、家を訪問して、肩をもんだり、話し相手をしました」 対象となるサービスは、自分ができそうなことなら何でもかまわない。高齢者の話し相手、子守り、留守番、畑仕事の手伝い、ヨガを教える、雪かきなど、どちらかと言えば、ボランティア的、地縁的な内容のものが多いのが特色である。何かをしてもらうと、自分の持ち分の中から、相手に「クリン」が支払われる。専用のメモ帳に、その都度、「クリン」の移動を記録する。してあげた人は、リストで見つけた別の人に、相手からもらった「クリン」を支払ってやってもらう。こうして「クリン」は、まさに貨幣のように次々と循環、流通してゆく仕組みである。

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