「直接償却」第一陣は商社業界

執筆者:2001年3月号

兼松、トーメンの次に“抜本処理”を迫られるのは日商岩井か 柳沢伯夫金融担当相が不良債権問題の最終決着を図るために打ち出した“直接償却”が経営再建中の建設や流通、商社、それらを支援する銀行に衝撃を与えている。直接償却とは、銀行が問題企業の債権売却を進めるなどして、不良債権をバランスシート(貸借対照表)から切り離すことをいう。「結果的に企業倒産が増える。積極的に同意できない」――。柳沢金融担当相の直接償却発言が伝わるや、日経連の奥田碩会長は産業界にある不安の声を代弁する形ですぐ異論を唱えた。銀行が債権を第三者に売却すれば、再建支援のための融資継続は困難になる場合が多く、企業にとって直接償却は死刑宣告に等しい。 銀行はこれまで問題企業向け融資に引当金を積んだり、不動産など担保を確保することで不良債権を処理してきた。だが、長引く景気低迷で問題企業の経営は一段と悪化し、担保価値も十年に及ぶ地価下落に代表される資産デフレで目減りが続く状況にある。銀行が問題企業向け融資を抱える限り、不良債権問題は解決しない。 貸し倒れに備えて引当金を積む“帳簿上”の処理ではなく、会社更生法など法的整理か、企業分割による解体処理といった外科手術を施すことが必要。問題企業そのものを消し去らない限り不良債権問題に終止符は打てない――。柳沢発言の背景には、こうした判断があるのは間違いない。柳沢氏以降、越智通雄、相沢英之の両金融担当相の時代に柔軟路線へ転じた金融行政のハードランディングへの回帰である。

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