日本「ネット犯罪天国」化の危険

執筆者:矢吹信2001年3月号

ネットの現実に追いつけない国内法整備の遅れ いつでも、どこからでも、送信ボタンを押すだけで政府の通信網を破壊したり、虚偽の企業情報を株式市場に流して巨額の利益を得ることができるネット犯罪――。ネット網は地球上にくまなく張り巡らされているだけに、発信地の特定さえ難しい。「ネット化の進展」は「犯罪の国際化」と同義語であり、二十世紀が核と化学兵器の時代だったとすれば、二十一世紀は「ネット攻撃の時代」と表現しても過言ではないだろう。 ルネサンス、産業革命と並び称されるIT(情報技術)革命。国防技術の民生転換により生まれたインターネットがまさにグローバルな経済社会を生んだわけだが、ネット犯罪というパンドラの箱も同時に開けた。先進諸国は悪魔の火薬箱を封じる手段を作ろうと今、水面下で格闘し始めた。ハッカーの刑罰は軽すぎる 欧州では現在、「インターネット犯罪防止条約」の策定が進んでいる。いわば「国際サイバー刑法」とでも言うべきもので、今秋にも内容が固まる予定だ。その後、条約の内容に沿って、先進国を中心に条約参加国はコンピューター・ウィルス製造などの犯罪認定化、被害国へのネット犯罪者の引渡しなどに向け、それぞれ国内法の整備を一挙に進めることになる。この条約作りには日本もオブザーバーとして参加しているが、これまでの状況をみる限り、日本の「もろさ」が浮き彫りになったと言わざるを得ない。

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