民放の「言論統制」に動く自民党

執筆者:山下仁2001年4月号

放送デジタル化をめぐり、放送法改正を民放側が求めているときだけに―― 自民党総裁選に橋本龍太郎元首相や小泉純一郎元厚相が出馬を決め、七月の参院選へ向けた政界再編の動きが盛り上がってきた。選挙の季節になると決まって頭をもたげてくるのがテレビ局の政治報道に対する永田町の牽制だ。しかし、今回は選挙前の恒例行事とばかり言えない趣だ。放送デジタル化を生き残るため規制緩和を訴える民放業界と、逆に規制強化で言論統制を狙う自民党がにらみ合っている。「有害な番組を流す放送局は、食中毒を出した店と同じ。営業停止にできるようにすべきだ」 今年二月初旬、自民党の古賀誠幹事長の下にある勉強会で、こんな過激な発言が飛び出した。その名は「放送活性化委員会」。委員長を務めるのは自民党・橋本派の熊代昭彦衆院議員だ。メンバーの中には元郵政大臣の野田聖子議員の名も見える。 民放のある幹部は、「『活性化』とは名ばかり。相当過激な言論弾圧が議論されているようだ。森喜朗首相をこき下ろした『ニュースステーション』(テレビ朝日)の久米宏や、『NEWS23』(TBS)の筑紫哲也などを名指しでやり玉に挙げている」と不安を隠さない。 これに加え、四月には実際にテレビ報道をチェックした上で法的手段も辞さないとする「テレビ報道番組検証委員会」も自民党内に設置された。会見で北村直人副幹事長は「テレビの報道番組をチェックして報告書をまとめて幹事長に提出する。名誉毀損で訴える場合もある」と説明した。

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