12000人

執筆者:伊藤洋一2001年4月号

 四月六日の金曜日、広島で今年初めて行なわれた広島―巨人戦を、球場で見た観衆の数だ。注目の上原―阿部バッテリーの初登場なのに、テレビの中継を見ていても「いやにがらがらだな」と判るほど空いていた。去年広島市民球場では巨人戦が十四試合行なわれているが、九月十九日火曜日の一四〇〇〇人が最低。今年は初日からそれを下回った。天候も悪くはなかった。お寒い数字はまだある。テレビのドル箱番組である巨人戦の視聴率が、今年低いところでは二%台となった。Jリーグ発足時の「大サッカー人気」のころを一時的ながら下回った。 日本の野球ファンは大リーグ、具体的に言えば大リーグに行った日本人選手の活躍に心を奪われている。彼らの活躍が伝わるのは日本時間の昼間にかけて。その前後に、野球に対する興味、エネルギーをかなり使ってしまう。昼休みにイチローのいるマリナーズのホームページを読むのがいかに楽しいか。他に、野茂も、新庄も大家もいる。そして、夜は他のことをしたい気分になる。 日本のプロ野球がテレビ、ラジオのニュースでカバーされる時間も短くなった。新聞の紙面もそうだ。大リーグの情報の占める割合が大きくなった。大リーグは日本人選手を取るに当たって確実に日本を「市場」と見ている。日本人選手はその狙いによくかなって活躍しているが、活躍自体は賞賛すべきことだ。しかし、日本球界の反撃策は何だろうか。実は、今のところ具体的なものは何も見えてこない。野球のグローバライゼーションである。その結果が日本における球場の観客数減少だとしたら、寂しい話だ。

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