「(台湾が中国から攻撃を受けた場合は)台湾の自衛を助けるために必要なことは何でもやる」 ブッシュ米大統領は四月二十五日、テレビインタビューでそう述べ、台湾防衛に異例の強い決意を表明した。 そして、五月一日ルイス・フリー米連邦捜査局(FBI)長官が突然辞任を発表し驚かせた。一週間のうちに起きた二つの予想外の出来事は一見無関係に見えるが、裏では「相互に関連している」と国際情報筋はみる。 アメリカの歴代政権は、台湾有事の際に軍事行動をとるかどうかをはっきりさせない「戦略的あいまい政策」をとってきた。ブッシュ発言はその政策からの大幅な逸脱である。「従来の政策の継続」と言い張るホワイトハウスの真の狙いはメディア操作にあった。 実は、ホワイトハウスは前夜、国防総省首脳に「ちょっとした爆弾が落ちるよ」と通告していた。だが、その中身を聞いて、関係者はみな不意を突かれた。「真意はつかみ切れていない」という柳井俊二駐米大使の反応や「脱線」と批判するワシントン・ポスト紙の報道はともかく、ペンタゴンまでがショックを受けたというのだ。 ブッシュ発言を演出したスタッフたちは明らかに“確信犯”と言える。恐らく、アンドルー・カード大統領首席補佐官、カール・ローブ戦略担当上級顧問、カレン・ヒューズ広報担当顧問ら側近が知恵を絞って考え出した策だろう。緻密に外交政策を練り上げてまとめた発言ではないのだ。

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