昨年秋、通産省(現経済産業省)がイランと合意したアザデガン油田開発の優先交渉権獲得が政府内部に波紋を広げている。まず、イランと領土問題を抱え、同国との関係が良好とはいえないアラブ首長国連邦(UAE)が、日本の突然のイラン接近に不快感を非公式に伝えてきている。イランでの油田開発は、原油調達先の多角化を進めたい日本の悲願だったが、UAEもサウジアラビアとならぶ大口原油調達先とあって無下にはできない。 もうひとつ無視できないのは、米政権も日本のイラン接近を好ましく思っていない点だ。そもそもの読み間違いは、同省の予想を裏切ってブッシュ大統領が誕生してしまったこと。エネルギー業界に近いブッシュ政権が日本の独自資源外交に神経質になるのは当然だ。 実はアザデガン油田をめぐる合意は、省内の「資源ナショナリスト勢力」主導で進められた経緯があり、UAEなど関係諸国への根回しも十分でなく、そのツケが回ってきた格好である。準備不足だったとの冷ややかな声は資源エネルギー庁の内部にもあり、「ナショナリスト派」にタガをはめようという動きも出始めた。

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