四月二十六日午後、自民党の小泉純一郎新総裁が森喜朗前首相に代わる第八十七代首相に衆参両院本会議で指名された。それから三時間後、首相官邸の執務室に党五役を集めた新首相は「驚天動地の人事と言われるかもしれないが」と言いながら、手書きの閣僚名簿を配った。 田中眞紀子外相(当選三回)、石原伸晃行政改革担当相(同四回)、中谷元防衛庁長官(同四回)、竹中平蔵経済財政担当相(慶応大教授)、遠山敦子文部科学相(国立美術館理事長)……。党五役の耳には既に情報として入っていたはずだが、自分の目で名前を確認し、あらためて「よくぞ、ここまで」と感じ入ったのだろう。沈黙が、しばらく続いた。 党五役のうち、これまで反主流派だったのは山崎拓新幹事長だけ。参院幹事長に留任した橋本派のドン、青木幹雄氏らにとって、歯に衣着せぬ執行部批判を売り物にしてきた田中氏や石原氏の起用がおもしろいはずがない。沈黙は一種異様な緊張をはらんでいた。 しかし、党員の圧倒的支持を得て選出された新首相に楯突く幹部はさすがにいなかった。「まったく驚天動地ですなあ」。複雑な思いを押し殺すように、最年長の新総務会長、堀内光雄・堀内派会長が当り障りのない感想を漏らすと、「いや、まったく」と一斉に笑い声が上がった。

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