「残り三カ月」のワヒド政権

執筆者:田畑昭2001年5月号

八月までの政権交代が濃厚となり、レイムダック化が急速に進んでいる[ジャカルタ発]インドネシア政局がいよいよ正念場を迎えている。「私は辞任しない」と強気一辺倒のワヒド大統領だが、命運は八月までに尽きるとの見方が大勢だ。果たして政権交代はスムーズに行くのか、「大統領に命を捧げる」と息巻く過激な大統領支持派が一九九八年五月のスハルト退陣劇を思い出させるような暴動を起こすのか。いずれにせよ、今後数カ月のインドネシアは政治危機、治安情勢の一層の不安定、経済の停滞を招くことは間違いなく、インドネシア初の民主化政権として登場したワヒド政権は、議会を軽視したために取り返しのつかない失政を犯したと言わざるを得ない。「私の代わりにだれが大統領になれるというんだ」。ワヒド大統領は五月上旬、面会した客にこう言い放ったという。国会は四月三十日、大統領に二度目の警告書を突き付けることを賛成三百六十三、反対五十二、棄権四十二の圧倒的多数で承認した。弾劾手続きがまた一歩進んだにもかかわらず、大統領に自信喪失の様子は見られない。 二度目の警告書の審議直前、大統領サイドは国会が何とか警告書の提出を決めないように有力政党と裏交渉を試みてきたが、票差が示すとおり、まったく効果はなかった。それどころか、一度目の警告書で食糧調達庁の福祉財団から三百五十億ルピアが大統領の名で引き出された件など二つの不正資金疑惑に対する弁明を求めた国会は、二度目では大統領の政治手法と統治能力そのものを問題視する姿勢に転じ、「この国をワヒド氏に任せられるのか」という根本的な疑問を提示した。

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