二〇〇二年W杯を覆う暗雲

執筆者:竹内浩2001年6月号

スポーツマーケティングの「巨人」ISLが倒産し、早くも悪影響が…… 国際サッカー連盟(FIFA)のマーケティング代理店ISL社(スイス)を傘下に置くISMM(インターナショナル・スポーツ・メディア・アンド・マーケティング)グループが破産した。昨年の欠損は六億スイスフラン(約四百十億円)といわれる。 ISLはこれまでのサッカーや陸上以外に、ここ二、三年の間に男子テニスのATPツアーや自動車カートレース、ブラジルの二つのサッカークラブと次々に契約を結んだが、いずれも投資に見合う収益の確保にはほど遠い状況だった。 テレビのデジタル化・多局化とニューメディアの発展の可能性を過大評価したスポーツ権利ビジネスでの経営の失敗だった。上場を狙い、投資家により魅力的な多くの権利をもつ企業になろうとして、拡充を急いだあまりにつまずいたとの見方もある。 経営の悪化から、ISMMは事業の継続は困難と判断し、買い取ってくれる相手を探した。受け皿が見つかるまで、スイスの国内法に基づいて破産宣告を三カ月間は行なわないよう、本社を置くスイスのツーク州の裁判所に手続きをとったのがことし三月末のことだった。一時、フランスのメディア大手、ビバンディ・ユニバーサルが買収を検討し、ISL内には買収されることで事実上生き残れるのではないかとの期待感があったものの、結局は裁判所が破産宣告の延期申請を却下したため、倒産が決定した。

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