市場に残っているのは懐疑の視線のみ。いよいよ見極められる、そのビジネスの“真贋” ソフトバンク二〇〇一年三月期の連結決算は、純利益が前期比四・三倍の三百六十六億円を記録。孫正義社長は、「ネットバブルを生き残った」と宣言した。同決算では、米投資会社を通じて保有する未公開企業の株式に五百三十億円の有価証券評価損が生じたものの、米シスコシステムズや米ヤフーなどの株式売却で穴埋めした。業績予想を発表しない同社が市場の批判をやり過ごせるのも、分厚い含み益を元手にした株式売却で損失を調整できるという強みを持つが故。六月一日現在、純含み益は八千九百二十二億円。昨年二月には五兆円超だったので五分の一以下だが、まだまだ余裕の水準だ。 だがこの決算の数字は、昨年バブルのピークを記録した米国市場に負うところが大きい。ネットバブルに沸いた多くの「ドットコム」(ネット新興)企業同様、ソフトバンクも実は、急拡大の反動が表面化しつつある。「今期が正念場だ」と、ある首脳が漏らす言葉にこそ、この「インターネット財閥」が抱える悩みが反映されていそうだ。ビジネスパートナーの離反 昨年秋から下落基調を強めた米ナスダック総合指数が、今年二月に入って急落した。これに同調するように、ソフトバンクグループが出資していた企業の行き詰まりも日米両国で相次ぎ表面化。まず、三月に電子決済サービスの米サイバーキャッシュが資金繰り難から倒産した。四月には、インターネットを使って取引所外で有価証券取引を仲介するイー・ボンド証券が会社清算を決定。営業開始から実質二カ月余りで、ネット上の債券市場から撤退した。さらに、音楽情報サイト運営会社ロンチ・ジャパンの合弁先である米ロンチ・メディアとの資本関係が解消された。続いて五月には、人材派遣会社、パソナソフトバンクの全保有株式を中堅派遣会社のフジスタッフグループに売却することを発表、ソフトバンクはネット事業への集中を理由に、人材派遣ビジネスからの撤退を表明している。

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