トヨタ自動車が専務の全員昇格による過去最多の副社長九人制を確立した。「業務内容が拡大しており、専門化している。トヨタとしてのチームワークを壊さないためにも、体制の再強化が必要だった」と張富士夫社長(六四)は説明するが、グローバル競争の中で戦うための強力な陣形をとった、いわば「トヨタ流危機管理」という内容だ。 六月発令の新役員体制では、役員が二人増の五十八人。副会長は現職の磯村巌氏(六八)とともに、池渕浩介副社長(六四)が新たに加わる二人体制となった。池渕氏はトヨタの生産方式に精通、国内外で、トヨタ生産方式のDNAを伝える“伝道師”として、人材育成に取り組む。 トヨタ内部の体制強化だけではない。トヨタグループ内には、日野自動車に蛇川忠暉副社長(六二)が新たに社長として派遣され、デンソーにもトヨタから二人目の役員として岩月伸郎取締役(五六)が、さらにお膝元の有力販売店である愛知トヨタには風岡宏明常務(五九)も派遣される。トヨタグループ挙げての体制整備が遂行されるわけだ。 利益で一兆円に王手をかけたトヨタだが、GM、フォードといった世界の強豪に比べると、株主資本利益率などは見劣りする。遠くない将来に豊田家への“大政奉還”を成し遂げるためにも、ここで総力を挙げて内部を固める必要があったという、トヨタ流「危機管理内閣」の誕生だと言えよう。

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