基地の町、神奈川県横須賀市に世界レベルの技術水準をもつ「ケータイの町」が出現した。在日米軍基地から南西にわずか十キロの高台にできた官民一体の「横須賀リサーチパーク」(YRP)がその中心だ。NTTドコモ、松下通信工業、ノキア、エリクソンが建ち並び、ドコモのiモード、さらに次世代携帯電話(FOMA)を共同開発した技術集積拠点として知られる。 都心から五十キロ圏、三浦半島の中央部分に位置するYRPは品川から電車で約一時間、「YRP野比」が最寄りの駅だ。この地区にハイテク基地建設の構想が持ち上がったのは一九八七年ごろだった。周辺の用地を所有する京浜急行鉄道がNTTに構想をもちかけたのがきっかけで、横須賀市と郵政省(現総務省)も参画し、一部第三セクターとして開発することが本決まりとなった。ところが、開発の途中でバブルが崩壊、さらに計画地に大きな断層が入っていることも分かり、進出を予定していた企業も二の足を踏み始めた。 状況が変わったのは、携帯電話の大ブームを予見したかのように、NTTが進出を強行したことだった。同社は計画地近くに電電公社時代からの「通研」(横須賀電気通信研究所、現NTT横須賀研究開発センタ)を擁しており、その縁でここに研究拠点を集約させることを決断したのだった。

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