一九七〇年代後半に吹き荒れたポル・ポト政権による虐殺行為を裁く特別法廷の設置法案がようやくカンボジア国会下院で可決され、生存するポル・ポト派幹部が法廷で断罪される道が開かれることになった。 国際社会が求めていた国際犯罪法廷はカンボジア政府の強い反対で実現せず、今回設置が決まったのは国内法廷だが、国連からの判事派遣などを受け入れることで国際社会の批判をかわす狙いがある。 しかし、訴追の対象をどの幹部にするかという「人選」に関しては、国連側がイエン・サリ元副首相、ヌオン・チア元人民代表議会議長、キュー・サムファン元幹部会議長の三人を強く要求しているのに対し、九六年に投降し、その後に恩赦を受けているイエン・サリ氏に関してはカンボジア政府が消極的な姿勢を示すなど、まとまっていない。 フン・セン首相は「国連の指示は受けない」と強気の姿勢を見せている。その背景には、武装解除に応じて投降したものの、依然影響力を残すポル・ポト支持派との無用の摩擦を回避するため、出来るだけ時間稼ぎをして、すでに高齢となっている元幹部らの天寿全うで幕引きをしたいという意図が見え隠れしている。

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