その「北」ルートの“総元締め”として、北朝鮮本国の対外工作機関が暗躍していた疑いが強まってきた。北朝鮮には朝鮮労働党傘下に「統一戦線部」「対外連絡部」「対外情報調査部」「作戦部」という四つの対外工作機関、軍に「偵察局」という特務機関があるが、今回の不正輸出を日本側協力者に要求したのは「作戦部」である疑いが濃くなった。「作戦部は北朝鮮の『三号庁舎』に本部を置き、改造工作船による情報収集、拉致、暗殺などを任務としているとされる。今回の事件が作戦部につながるとすれば、日本人拉致の道具にされていた可能性が強い。その船が日本から売られていたとなれば、まさに問題だ」(情報筋) 日本政府が初の海上警備行動を発令した二年前の能登半島、佐渡沖の不審船事件では、海保の巡視船の追跡を振り切って逃げた不審船が北朝鮮の清津に帰港していたことが、米国の軍事衛星などの情報で判明している。清津には作戦部の母港があり、この不審船が作戦部所属のものだったことが確認された。作戦部と関係が深いとされる北朝鮮の商社が、今回の密輸実行犯と取引をしていた形跡も捜査線上に浮かんでおり、疑惑はいっそう濃厚になっている。

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