「クローン技術規制法」はできたが、生殖医療に対する監視は不十分。クローンに遠いようで近い国、日本の現状をレポートする。 イギリスでクローン羊ドリーが生まれてから五年がたつ。一つの細胞から同じ遺伝子を持った個体をつくるクローン技術が人間に応用され、世界のどこかでクローン人間がつくられる可能性は、時間の経過とともに少しずつ、しかし確実に高まっている。 クローン人間と聞いて、日本と結び付けて考える人はほとんどいないかもしれない。だが実は、日本がクローン人間づくりと無縁でいられるのかどうかを、密かに不安に思っている関係者は少なくない。あまり注目されていないことだが、日本には動物のクローンを作成する高水準の技術が広く普及しているうえ、クローン人間誕生の「現場」となる可能性のある、生殖医療に対する規制が緩いからだ。 六月六日、クローン人間を生み出す行為を禁じる「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」が施行された。核を取り除いた人間の未受精卵(卵子)に人間の体細胞を移植(核移植という)してできる「クローン胚」を、人間や動物の子宮に入れて妊娠させることを禁止、違反者には十年以下の懲役または一千万円以下の罰金を科すという厳しい内容の法律だ。しかも法が定める特定の胚を使う研究は、妊娠や出産を目的としない試験管レベルのものであっても、すべて文部科学省への届け出が義務付けられている。

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