米エネルギー大手のエンロン傘下の発電会社、イーパワーが、宇部興産から山口県宇部市で建設を予定している石炭火力発電所の土地を購入したことで、日本でのエンロン系の火力発電所第一号の実現性が高まってきた。 日本の電力業界ではエンロンに対し、「発電所の建設をにおわせているだけで、本当の狙いでは日本の電力会社から譲歩を引きだそうとしている」との見方が強かった。だが、今回二十七億円を投じて土地を手当てしたことで、「少なくとも発電所建設は本気」との見方に変わってきている。 問題はその真意。電力業界では、同じくイーパワーが青森県むつ市で進める発電能力二百万キロワットの大型ガス火力発電所の建設計画についてもブラフ(おどし)とみる人が多い。だが、「送電のためのインフラが必要だとして、地元の東北電力が最も恐れる総額四、五千億円の首都圏向けの基幹送電線の新設要求をし始める」とも囁かれている。 意外にも“本気”なエンロンによって、東北電力は思わぬ火中の栗を拾わされる恐れが出てきた。

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