マスコミこそ“縦割り”の打破を

執筆者:伊藤洋一2001年8月号

 政府に強く「構造改革」を進言する日本のマスメディアにも「構造改革」が必要なのではないか、と強く思わせる七月の参議院選挙報道だった。 鮮明に思い起こされるシーンが一つある。NHKの開票速報だった。テレビ画面には小泉首相、鳩山民主党代表などなど、各党の党首が区切られた升目に映されている。その党首たちに向かって、キャスター氏は次々に問いかける。「構造改革ですか、それとも景気優先ですか」――。 二者択一の設問となっているからには、どっちか選べ、ということなのだろう。「構造改革なくして景気回復なし」。つまり二択の視座から見れば「どっちも」と答えているに等しい小泉首相をはじめ、大部分の党首は「選べ、選べ」と迫られ通しで辞易しているのが窺えた。 何事にも当意即妙を求めるテレビである。喋る内容をよほど選ばなければ、支離滅裂な回答とみなされかねない。「日本経済の実体を少し考えれば、そんな対比は無意味、無謀だろう」と内心毒づきながらも、升目の中の人達が少し気の毒になってきた頃のこと。「あなた、じゃあ構造改革ってなんですか。説明してくださいよ」と、小沢自由党党首が怒り出してしまったのだ。 動揺の色も顕に急ぎ話題を変えたのは、その場を仕切っていたキャスター氏である。攻守が逆転した、実に不思議な光景だった。

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