八月十日、自民党は党大会に代わる両院議員総会を開き、小泉純一郎総裁(首相)の無投票再選を決めた。九月末の任期切れを待たず、この時期に総裁選日程を前倒ししたのは、四月まで参院選惨敗は必至とみられていた自民党に奇跡の逆転勝利をもたらした人気首相への、党執行部の感謝と激励の意思表示だった。 自民党の総裁公選規程は「議員投票の投票日は、総裁の任期満了日前十日以内とする」と定めている。この規程を変えない限り、本来は総裁選は九月下旬にしか行なえないのである。お盆前の小泉再選はいかにも自民党らしい、融通無碍な“超法規的措置”だった。「執行部刷新」要求が広がらないうちに、小泉再選とセットで自らの続投も決めてしまいたいという山崎拓幹事長らの見え見えの思惑にも目をつぶり、党内各派が無条件で前倒しを受け入れたのはほかでもない。「抵抗勢力」のレッテルを貼られたくないという思い以前に、予想外の選挙結果に半ば酔い、また半ば打ちひしがれていたためだ。小泉内閣が促した無党派層の自民シフト 勝利感と敗北感が相半ばする複雑な受け止め方。その原因は良くも悪くも従来の自民党の常識を覆す票の出方にあった。 七月二十九日に投票が行なわれた第十九回参院選(改選議席百二十一)で、自民党は比例代表で二十、都道府県単位の選挙区選挙で四十四の計六十四議席を獲得した。自民党が全国規模の国政選挙で過半数を取ったのは一九九二年の参院選が最後。その後三回の衆院選、二回の参院選はいずれも過半数に届かず、自民党は文句なしの政権政党から、ワン・オブ・ゼムの比較第一党に転落していた。長期低落傾向を打ち破る九年ぶりの勝利に自民党がいかに沸いたかは、深夜、未明にかかわらず党本部に駆けつける幹部の多さ、そして互いに抱きつかんばかりに握手を交わす光景が雄弁に物語っていた。

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